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【耳管開放症のセルフケア②】体に負担の少ない有酸素運動がおすすめ

【耳管開放症のセルフケア②】体に負担の少ない有酸素運動がおすすめ

激しい運動によって体力を消耗することが、耳管開放症の発症のきっかけになることがあります。体重が何㎏も落ちてしまうような運動習慣はお勧めできません。すでに耳管開放症をお持ちの人も、激しい運動をすると症状が強く出やすい傾向があります。【解説】萩野仁志(はぎの耳鼻咽喉科院長)

解説者のプロフィール

萩野仁志(はぎの・ひとし)
自らの耳管開放症を治した経験から、西洋医学と東洋医学を融合させた独自の治療体系を確立し、成果を上げる。耳管開放症の名医としてインターネットで話題となる。東海大学医学部卒業。はぎの耳鼻咽喉科院長。東海大学医学部専門診療学系漢方医学教室非常勤講師。クラシック&ジャズ・ピアニストとしても活動。共著書に『「医師」と「声楽家」が導く 人生最高の声を手にいれる6つのステップ』(音楽之友社)などがある。

耳管開放症の人向けの運動とは

有酸素運動は〇、激しい運動は×

私の患者さんのなかに、小学校のマラソン大会がきっかけで、耳管開放症が始まったという人がいました。このような激しい運動によって、体力を消耗することが、発症のきっかけになることがあります。

結果として、体重が何㎏も落ちてしまうような運動習慣は、お勧めできません。また、すでに耳管開放症をお持ちの人も、激しい運動をすると、症状が強く出やすい傾向があります。

耳管開放症の人は、耳管周辺に血流障害が起こっていると考えられます。

症状の出ている側の耳を下にして横になると、症状が楽になります。下になったところには血液が集まりやすくなるので、症状が軽快するのです。これは、耳管の周辺の血流状態が、症状と密接に関連していることを物語るものといっていいでしょう。

だからこそ、耳管周辺の血行をよく保つことが重要です。運動をすれば、全身の血液循環も改善しますから、それは耳管のためにもいいのではないかとお考えになる人もいらっしゃるでしょう。

ところが実際は、激しい運動をすると、症状が出やすくなります。運動中は、使われている主要な大きな筋肉に血液が集まります。その結果、耳管の周辺に回ってくる血液が減少し、症状が出やすくなると考えられるのです。

その一方で、ひどい運動不足になるのも、やはり、よくありません。どうしても運動をしたいという人は、体に負担の少ない運動がお勧めです。有酸素運動で、例えば、30分くらいのウォーキングなどが、最もお勧めの運動となるでしょう。

激しい運動が発症のきっかけになることがある
体に負担の少ない有酸素運動がお勧め

ヨガは〇、ホットヨガは×

耳管開放症の症状は、天候と連動することがよくあります。気圧の変化が、私たちの体にさまざまな影響を及ぼすからです。

気圧が高気圧に傾くと、自律神経のうちの交感神経が優位な状態となり、呼吸・脈拍が速くなり、免疫システムにも変化が現れます。白血球中の顆粒球とリンパ球の比率が変わり、顆粒球がふえるのです。

一方、低気圧では、副交感神経が優位な状態となり、呼吸と脈拍が遅くなり、リンパ球の比率が増大することがわかっています。このように気圧の変化に応じて、自律神経のバランスは変動します。

その結果、天気が下り坂になり、気圧が低くなる状況では、耳管開放症の諸症状が悪化し、自律神経失調の症状が起こってきます。耳がつまったり、自声強調が強く現れたりするほかに、頭痛や吐き気、ひどい肩こりなどの不定愁訴が起こる人がたくさんいるのです。

耳管開放症の患者さんにとってのいちばんの悪条件は、湿気が多く、暑いことです。ですから、ヨガはいいですが、ホットヨガ(高温・高湿度の室内で行うヨガ)は勧められません。サウナも避けたほうがいいでしょう。

一方、脱水も、症状の悪化を引き起こします。脱水を避けるために、特に夏場は水分補給を忘れないようにしてください。

むろん、通常の脱水症状を予防するための心得と同じで、一度に大量の水を摂取すればいいというものではありません。水を大量に飲むだけでは、かえって体内の電解質バランスをくずして体調不良を引き起こします。飲む量は、かいた汗の量を目安にし、汗で失われた塩分もきちんと補給しましょう。

また、鼻粘膜の乾燥も、症状の悪化と関連しています。

睡眠時無呼吸症候群の人で、その治療の一環として、CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)を行っている人がいます。これは、機械で圧力をかけた空気を鼻から気道に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止するものです。

しかし、この送り込まれる空気によって鼻の奥が乾き、耳管開放症を発症するケースがあるので、要注意です。

耳管開放症の人には、湿気が多いこと、暑いことが大敵
脱水症状にも注意が必要

ステロイドの使用は慎重に

耳鼻科の疾患に限らず、ほかの部位の疾患でも、ステロイド薬が投与されたあとに、耳管開放症になる人がいます。

そもそもステロイドとは、副腎皮質ホルモンと呼ばれる物質です。腎臓の上部にある副腎という臓器の副腎皮質というところでつくられるホルモンです。このホルモンのうち、糖質コルチコイドという成分を化学合成したものが、主に医薬品のステロイドとして使われています。

医薬品としてのステロイドの薬理作用には、①炎症を鎮める、②免疫を抑制する、③アレルギー症状をおさえる、といった作用があり、多くの疾患の治療に使われています。

ステロイドには、短時間で効きめが現れるというメリットがありますが、強力な副作用をもたらすことも少なくありません。

ステロイドの生みの親である副腎では、ストレスに対抗するためのホルモンがつくられています。人が強いストレスを受け続け、副腎が絶えずストレスに対抗するためのホルモンをつくり続けていると、副腎は休むことができなくなり、疲れ果ててしまいます。

この状態が、いわゆる「副腎疲労」です。

この副腎疲労の状態のときにステロイドを投与すると、さらに副腎の機能低下が起こります。ときに、ステロイド投与のリバウンドとして、耳管開放症が発症するのではないかと私は推定しています。

耳の疾患でいえば、低音障害型感音難聴という病気があります。突然、耳がつまったようになり、低い音だけが聞こえにくくなる疾患です。以前は、突発性難聴と同じ病気と見られていましたが、最近では、突発性難聴よりも治る可能性の高い、別の病気として、分けて考えられるようになっています。

この病気の治療に、軽症例においても、第1選択薬としてステロイドを使う考え方があります。しかし、困ったことに、ステロイド投与で確かによくなる人もいる一方、私の経験では、かえって悪化する人も少なくありません。

しかも、そのなかに、耳管開放症が隠れているのです。こうしたケースでも、ステロイドが副腎疲労の状態を増悪させ、病気を起こしている可能性があります。

このように、耳管開放症においては、低音障害型感音難聴がしばしば見られます。ですから、感音難聴が軽症の場合は、常に耳管開放症も念頭において診察し、耳管機能に異常を疑われるのであれば、ステロイド投与は慎重であるべきだと考えています。

ステロイドは、その副作用も考えれば、使用法や使用量を慎重に検討すべき薬剤です。最近、耳管開放症は決してまれな疾患ではありません。治療に当たる医師も、そして、患者さんも、あらためてステロイドの副作用には細心の注意を払うべきではないでしょうか。

ストレスを受け続けると「副腎疲労」になってしまう
副腎疲労のときにステロイド薬を使うのは慎重になるべき

耳管開放症とピルの難しい関係

最近では、ピルを服用する女性がふえてきました。ピルは、人工的に妊娠状態をつくり出し、避妊や生理痛の軽減などのために利用されている薬剤ですが、肌荒れなどで悩んでいる女性に対して、婦人科の医師がピルの服用を勧めることが多くなっています。

ピルを服用することによるプラス面があることは事実です。
例えば、避妊以外の効能を挙げると、

生理痛・生理不順の改善
月経困難症(PMS)、子宮内膜症の改善
吹き出物の軽快
視野狭窄やめまいの改善
冷え症、頭痛の改善

などがあります。しかし、いいことばかりではありません。
ピルを飲むことによって、副作用が生じるのです。

ピルのマイナス面について、私の患者さんで頻度の高いものを列記すると、

頭痛・吐き気・うつ
むくみ(体重増加)
皮膚の色素沈着
上咽頭炎の悪化
耳管開放症の悪化

などがあります。ピルは吹き出物を改善し、肌の状態をよくしてくれる一方、肌をくすみやすくさせるといった副作用をもたらすことがあります。ピルを飲んで頭痛がよくなる人がいる一方、ピルの服用によって、頭痛が起こる人もいるのです。うつ傾向が強まる人もいます。

ホルモンの働きを支配する内分泌系と、自律神経は密接に関係しています。ホルモンバランスが不安定な人は、自律神経も乱れがちで、生理不順や頭痛などの不定愁訴も多くなります。ピルを飲むことで、ホルモンバランスが安定すれば、元気になる人もいるでしょう。

しかし逆に、ホルモンバランスが不安定になるという人もいるのです。そうした人は、ピルのマイナス面のほうが強く現れていると考えられます。

どちらに転ぶかは、個々の体質によって違います。ですから、ピルは、飲めばすべてがうまくいくというような万能の薬ではないということは、しっかり認識しておいたほうがいいでしょう。


気になるのは、耳管開放症との関係です。

妊娠すると、ホルモンバランスが変わり、それが耳管開放症の発症を促すと考えられています。人工的に妊娠状態をつくり出すピルも、同じことが当てはまります。

特に、私のクリニックにやってきた耳管開放症の患者さんの症例を検討すると、次のようなプロセスが想定できます。

もともと、慢性上咽頭炎のあった患者さんがピルを飲むと、それがきっかけとなって、慢性上咽頭炎が悪化します。慢性上咽頭炎が悪化すれば、自律神経が乱れる結果、多くの不快症状が起こってきます。それとともに、耳管開放症の発症が促されたり、すでに耳管開放症のあった人なら、症状の悪化がもたらされたりすると考えられます。

実際に、ピルの服用中の耳管開放症の患者さんに、ピルをやめてもらうと、2~3日後に耳管開放症がよくなる人がいます。

また、ピルにも種類がいろいろあります。メーカーによって薬剤の内容が違います。なかには、違うメーカーのピルに替えただけで、耳管開放症がよくなった人もいました。

ピルの代わりとして、漢方薬を使う方法もあります。漢方薬で、体調を整え、不定愁訴をへらしながら、徐々にピルの服用量をへらしていくのです。ピルを服用中で、ピルの副作用に悩まされている人は、漢方薬の服用も検討してみるといいでしょう。

ピルを飲むと、耳管開放症の発症が促されたり、悪化したりすることがある
ピルの代わりに漢方薬を使う方法もある

おすすめの本

なお、本稿は『謎の耳づまり病を自分で治す本』(マキノ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳細は下記のリンクよりご覧ください。

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