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【耳管開放症のセルフケア①】鼻うがいは最も簡単な上咽頭の洗浄法

【耳管開放症のセルフケア①】鼻うがいは最も簡単な上咽頭の洗浄法

耳管開放症の症状は体調と連動しています。ここでは症状の改善に役立つセルフケアと、日常生活のうえで注意したいポイントを紹介します。・鼻うがい・爪もみ・睡眠・鼻をすすらないこと、についてです。【解説】萩野仁志(はぎの耳鼻咽喉科院長)

解説者のプロフィール

萩野仁志(はぎの・ひとし)
自らの耳管開放症を治した経験から、西洋医学と東洋医学を融合させた独自の治療体系を確立し、成果を上げる。耳管開放症の名医としてインターネットで話題となる。東海大学医学部卒業。はぎの耳鼻咽喉科院長。東海大学医学部専門診療学系漢方医学教室非常勤講師。クラシック&ジャズ・ピアニストとしても活動。共著書に『「医師」と「声楽家」が導く 人生最高の声を手にいれる6つのステップ』(音楽之友社)などがある。

鼻うがいは最も簡単な上咽頭の洗浄法

慢性上咽頭炎は、耳管開放症と密接に関係しています。

慢性上咽頭炎を改善し、耳管開放症にも劇的な治療効果を発揮するEAT(上咽頭擦過治療)は、残念ながら、この治療で使用される塩化亜鉛が劇物であるため、医療機関でないと行えません。

その代わりになるセルフケアが、鼻うがいです。鼻うがいをすることで、上咽頭の病原菌は洗い流され、上咽頭の炎症が治まり、きれいになります。

生理食塩水を用いると、より簡単に、上咽頭を洗浄することができます。鼻から水が入ると、ツンとした刺激を感じる経験をした覚えのある人もいると思います。しかし、鼻うがいに使う生理食塩水は、体液と同じ濃度であるため、水道水で鼻うがいを行ったときのように、染みることはありません。

ちなみに、私が提案する鼻うがいの方法では、うがいに使った少量の生理食塩水は、そのまま飲んでしまっても大丈夫です。

洗浄液を飲み込むと、菌が胃腸にいって吸収されてしまうのではないかと、抵抗を感じる人もいるでしょう。しかし、その心配は無用です。胃に届いた鼻うがい液は胃酸で処理されるため、ピロリ菌のような特殊な菌でなければ死滅するからです。

また、鼻洗浄用の器具も市販されているので、それらを利用するのもいいでしょう。鼻うがいのやり方は下の図を参照してください。

鼻うがいのやり方

用意するもの
・小さめのプラスチックボトル(鼻に当てて、うがい液を入れるもの。薬局などで鼻洗浄用のボトルも購入可能)
・精製水やミネラルウォーター500㎖
・食塩4.5g

やり方
①生理食塩水を作る。(*余ったら冷蔵庫で保存し、約1週間をめどに使い切る)
②生理食塩水をプラスチックボトルに入れたら、上を向いて、首を60度ほど傾ける。
③片方の鼻の穴にボトルの先端を当てて、ボトルを押して、生理食塩水を鼻から入れる。
④のどに落ちてきた生理食塩水を、そのまま飲み込む(口から出してもよいが、量が少ないので、飲み込んだほうが楽)。
⑤もう一方の鼻も同様に行う。
※以上を1日に2~3度行う。回数は徐々にふやしてもよい。

鼻うがい液として、生理食塩水の代わりに、市販の青梅の搾汁濃縮液(商品名:ミサトール)を使う方法もあります。

鼻うがいを行ったあとは、スッキリして快適になるはずです。慣れれば、比較的簡単にできるようになります。ぜひ習慣化するといいでしょう。

ちなみに、生理食塩水を使った場合も、市販液を使った場合も、鼻うがいの直後に鼻をかむことは避けましょう。まれに中耳炎になることがあるからです。

ほかに、ご高齢で誤嚥(食べ物や異物を気管内に飲み込んでしまうこと)のリスクのある人は、やはり、鼻うがいは控えたほうがいいでしょう

鼻うがいはEATの代わりになる家庭療法
鼻うがいの直後に鼻をかむことは避ける。誤嚥のリスクのある人も同様

自律神経の乱れを調整する爪もみ

耳管開放症では、しばしば、自律神経(意志とは無関係に体の機能を調節している神経)失調の症状を伴います。そうした人の自律神経に乱れが生じていることは、間違いありません。

この乱れた自律神経を調整するための方法として、お勧めしたいものが、気血免疫療法会元理事長の故・福田稔医師が考案された爪もみです。

爪もみは、手足の爪の生え際にある井穴(せいけつ)というツボを、指で刺激する健康法です。井穴は、神経線維が密集している、非常に感受性の高い場所です。ここを刺激すると、直ちに自律神経に刺激が伝わり、自律神経のバランスの回復に役立つと考えられています。

耳管開放症の治療に詳しい金沢市立病院の石川滋先生は、耳管開放症に悩む人では、自律神経が乱れ、交感神経が優位な状態に傾いていると考えました。そこで、自律神経を副交感神経優位に導き、バランスを取る方法として、爪もみの有効性を検証しています。

耳管開放症の患者さん(114名)の協力を得て、爪もみの臨床研究を行い、2012年の日本耳鼻咽喉科学会で発表しました。石川先生は、爪もみを毎日やってもらって、爪もみを行う前と後とで、聴力の変化を調べています。

この発表では、聴力が耳管開放症の改善の指標となっています。それによると、両耳とも改善が見られた人が47人(41.2%)。片方の耳だけ改善した人が16人(14.0%)。片方の耳だけは改善したが、もう一方の耳は悪化したのが30人(26.3%)。

一方、悪化した人は18人、不変の人が3人。この結果、よくなった人を合計すると、93人で、81.6%もの人に改善効果が現れたと、石川先生は報告しています。

爪もみは、従来から、自律神経の調整に役立つ方法として知られているものですから、皆さんも、ぜひ試すといいでしょう。爪もみのやり方は、下の図を参照してください。

爪もみのやり方

やり方
①刺激する場所は、両手の爪の生え際から、2㎜ほど下がったところ。(ただし、厳密な位置にこだわる必要はない)
爪の生え際を、反対側の手の親指と人差し指で両側からつまみ、押しもみする。

②両手の5本の指を、それぞれ10秒ずつ刺激する。押す強さは、「少し痛いけれど気持ちがいい」程度。特に、耳鳴り、難聴、耳管開放症の人は、中指を20秒刺激するとよい。
※1日3度を目安に、毎日続ける。

爪もみを初めて行った人の多くが、「手足がポカポカしてきた」「ジンジンしてきた」と感じます。これは、手足の血行が改善されてきたことを示しています。

耳管開放症の人は、耳管周辺に血流障害が生じていることが多いので、血行を全身から促すことができる爪もみは、その点からも勧められるセルフケアなのです。

爪もみは自律神経の調整を目的にした家庭療法
耳管開放症の8割の人に改善効果が見られたという研究がある

ストレス対策としての睡眠

ストレスは、耳管開放症を引き起こす最大の原因です。

大きなストレスがかかり続けると、自律神経のうちの交感神経が優位な状態が続く結果、体に無理がかかり、自律神経のバランスがくずれます。同時に、ストレスホルモンが過度に分泌され続けることで、副腎疲労を招きます。この2つが、ともに耳管開放症の発症に深くかかわっています。

ですから、ストレス対策は欠かせませんが、ストレス社会に生きる私たちには、ストレスなしの生活というものはそもそも考えられません。仕事がストレスになるからといって、仕事をやめられるわけではありません。

そこで、ストレスに対処する方法を身につけ、できるだけストレスをためないように心がける必要があります。楽しめる趣味を見つけたり、自分なりのストレス解消の方法を見つけることが大切です。

そんななかでも、ぜひ心がけてほしいのが、睡眠時間の確保です。

耳管開放症の人の大半は、交感神経が優位な生活をしており、しかも、自律神経の乱れによって不眠にも悩んでいる人が多いのです。また、不眠が、症状を助長させる誘因ともなっています。

不眠に悩み始めると、「今晩も眠れないのでは?」と心配になり、それがいよいよ寝つきを悪くする悪循環に陥りがちです。不眠を解消し、不眠による心身の消耗を、できるだけへらすことが大事です。寝つきをよくする方法をいくつか挙げておきますので、ぜひお試しください。

就寝前にパソコン、スマートフォン(以下スマホ)を操作しない

パソコンやスマホの画面から発する光に含まれるブルーライトは、脳を目覚めさせてしまう効果があります。寝る直前までスマホを見ていると、脳が覚醒し、眠りに入りにくくなるのです。

スマホの内容に夢中になっていれば、脳が興奮状態に陥っていますから、いよいよ寝つきにくくなります。スムーズな入眠のためには、少なくとも就寝の30分前には、スマホやパソコンはやめておくべきです。

首の後ろを温める

また、体が冷えると眠れません。手足が冷えて寝つきにくいという人は、寝床に湯たんぽを入れたり、靴下をはいてベッドに入ったりすることをお勧めします。特に、寝る前に湯たんぽで首の後ろを温めると、寝つきやすくなります(ヤケドには注意してください)。

夕食の時間を早めにする

夕食は、できれば眠る3時間前にすますようにするといいでしょう。胃がもたれているような状態では、熟睡できません。


ふだんから体を温めておくことも大事です。続きの記事でお話ししますが、耳管開放症に対して、冷えを解消する効能もあわせ持っている桂枝茯苓丸などの漢方薬が有効であることがわかっています。

耳管開放症という病気の原因として、ストレスやホルモンバランスの問題などを挙げてきましたが、体の冷えや血流不全も発症にかかわっていることは間違いありません。

耳管開放症の患者さんで、冬場に手足にしもやけを起こす人も多いのです。それだけ冷えていれば、間違いなく、血流状態もよくないと考えられます。だからこそ、体をできるだけ冷やさない工夫も必要になってきます。

ストレス対策として、睡眠時間を確保することが大切
体を冷やさないことも大切

なるべく鼻をすすらない

耳管開放症の患者さんのなかには、鼻をすすると、耳管の空気が鼻腔に吸い込まれて内圧が下がり、開いていた耳管が閉じる人がいます。耳管が閉じれば、それまで感じていた不快症状が多少なりとも楽になるので、そういう人は、しだいに、鼻すすりを習慣的にくり返すようになります。

こうしたタイプの耳管開放症を、「鼻すすり型耳管開放症」といいます。

ただし、鼻すすりを頻繁にくり返すようになる習慣は、体によくありません。

鼻すすりをくり返すうちに、中耳腔の陰圧のために中耳腔に水がたまったり(滲出性中耳炎)、鼓膜がしだいに中耳側にへこみ、中耳の壁に癒着したり(癒着性中耳炎)、鼓膜の内陥が進行して真珠腫性中耳炎になったりと、中耳の重大な病気が起こってくるおそれがあります。

また、耳の聞こえが悪化することもあります。

これらの症状は、1回の鼻すすりですぐに起こるわけではありません。しかし、鼻すすりを何回もくり返していると、長い年月を経て、それらの中耳の疾患が生じてくるのです。

クセになっているので、やめるのはなかなか難しいところがあるかもしれませんが、鼻すすりはできるだけ控えるようにしてください。

ただし、絶対に鼻すすりをしないと心に誓ってがんばるのも、それはそれでストレスになります。「習慣的にくり返すのはなるべく控えておこう」という程度が、ちょうどいいかと思います。

鼻をすすると、耳管開放症が楽になることが多い
しかし、鼻すすりを長く続けていると、中耳の疾患が生じるおそれがあるので、なるべく控えるようにしよう

おすすめの本

なお、本稿は『謎の耳づまり病を自分で治す本』(マキノ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳細は下記のリンクよりご覧ください。

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