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【耳管開放症の治療法】ルゴール塗布や生理食塩水点鼻が一般的

【耳管開放症の治療法】ルゴール塗布や生理食塩水点鼻が一般的

耳管開放症に対して行われる治療法はいろいろあります。一般的に耳鼻咽喉科で行われている治療の代表的なもの、ルゴール塗布、生理食塩水点鼻、鼓膜パッチ療法、耳管ピンについて、また耳管狭窄症との違いについてお話しします。【解説】萩野仁志(はぎの耳鼻咽喉科院長)

解説者のプロフィール

萩野仁志(はぎの・ひとし)
自らの耳管開放症を治した経験から、西洋医学と東洋医学を融合させた独自の治療体系を確立し、成果を上げる。耳管開放症の名医としてインターネットで話題となる。東海大学医学部卒業。はぎの耳鼻咽喉科院長。東海大学医学部専門診療学系漢方医学教室非常勤講師。クラシック&ジャズ・ピアニストとしても活動。共著書に『「医師」と「声楽家」が導く 人生最高の声を手にいれる6つのステップ』(音楽之友社)などがある。

代表的な治療法とは

耳管開放症に対して行われている治療法は、いろいろあります。ここでは、一般的に耳鼻咽喉科で行われている治療の代表的なものを、ひととおり紹介します。

ルゴール塗布

開いたままになっている耳管に、ルゴール液(日本薬局方名は複方ヨード・グリセリン)を塗布します。すると、耳管が腫れます。その結果、耳管が閉じるという治療法です。これによって、数日間、症状がよくなることがあります。

当然ですが、腫れが引けば、耳管は元の開いた状態に戻ります。軽症の耳管開放症のかたには、一時的な効果が期待できます。しかし、重症のかたに年単位で行うと、かえって症状が治りにくくなります。そのため、ルゴール液を原液で使用するのは、注意が必要です。

なお最近は、保湿ジェルでルゴール液を薄めて耳管に注入する方法もあります。この方法だと原液を使用しないので、副作用が軽減されます。それとともに、効果が長持ちするという利点もあります。


生理食塩水点鼻

生理食塩水を点鼻します。これで一時的によくなることもあります。しかし、あくまでも一時的な効果です。食塩水を点鼻すると、耳の奥の耳管咽頭口から耳管内に食塩水が入って、耳管内がぬれ、一時的に狭くなると考えられています。

この方法は、あくまでも短時間の一時的な対症療法(症状を軽減するための治療法)と考えられますが、例外的に、これで耳管開放症が治った経験を語る耳鼻咽喉科医もいます。

私は、そもそも対症療法として開始されたこの治療法が、根治となった可能性について、ある考えを持っています。それは、塩水がのどの奥にある「上咽頭」という部分に働きかけた結果というものです。この上咽頭に対する効果については、続きの記事で詳しくお話しします。


鼓膜パッチ療法

鼓膜に、医療用のテープなどをパッチ(継ぎ当て)として貼りつけると、鼓膜の動きが制限されて、一時的に症状が軽減します。テープなどのパッチがはがれると、症状は再発します。


耳管ピン

耳管の中に、シリコンなどでできた「耳管ピン」という器具を入れて、強制的に耳管を狭くします。外科手術が必要になります。ここで紹介する、すべての治療法を行った結果、全く有効な方法がない場合は、最後に考えてもいい方法だと思います。

ただし耳管というのは、そもそも開いたり閉じたりして、鼓室の気圧調整を行うことを、主な働きとしている器官です。耳管ピンをつめれば、本来行うべき気圧の調整が難しくなるのは、容易に想像がつきます。

このように、本来の機能を大きく変える手術をした結果、それで状態がよくなるかどうかは、長期的な術後の観察と評価が必要です。過去に私も、耳管ピンを用いて治療をしたことがありますが、残念ながら私の患者さんたちでは、長期的に診て、いい結果は得られませんでした。

手術直後は、一時的に症状はよくなります。数ヵ月はいいのですが、年単位で観察すると、多くの場合、再発してしまいました。私は、この治療法に限界を感じたため、その後、治療の方向性を変えていきました。

現在、この治療法を行っている先生がたにお願いしたいのは、術後、年単位で予後を検討していただくことと、もし再発したとき、それに対応する方法や、耳管ピンの改良などを行っていただきたいことです。私の力が及ばない患者さんに対して、有効な治療法に発展していくことを、切に願います。


私自身、ここで紹介した対症療法的な治療法は皆、試してきました。

しかし、ほとんどのケースで、うまくいきませんでした。一時的によくなることはあっても、再び悪化するケースが大半でした。完治に向かうような有効な治療とはならなかったのです。

なぜ、これらの治療法がうまくいかないのか、私は自問自答を続けました。

ルゴール噴霧と生理食塩水注入は、耳管を一時的に狭くさせる治療法。効果も一時的
そのほかの治療法も、一時的な効果はあっても、根本的には治らない

大学病院で「この病気は治りません」といわれたが、本当か?

大学病院では、耳管開放症の人がきたら、まず最初に内視鏡で耳管をのぞき、耳管がやせているかどうか確認します。やせていることを確認すると、次に、CTスキャンを撮って、耳管のやせ具合を精査します。並行して、聴力検査や鼓膜の動き具合を確認する検査などが行われるはずです。

いずれにせよ、大学病院でも、耳管が目に見えてやせていれば、「あなたは耳管開放症だから、太りなさい」といわれることになるでしょう。

耳管開放症は、耳管がやせて、つまり、形が変形することによって症状が起こることが多い。だから、やせた形を治すことが症状を治すことにつながる、と西洋医学では考えます。それで、太りなさいということになるのです。

しかし、無理に太っても、よくなりませんし、過去にやせていた人がリバウンドして、現在太っていても、症状自体は相変わらず出ているという現実があります。

それになにより、もし仮に太ることができたにせよ、やせてしまった耳管が必ずしも太る(耳管の脂肪組織が戻る)とは限りません。私の臨床知見からいえば、内視鏡的に耳管咽頭口を見ると、体が太ったら耳管も太る、ということはめったに起こりません

形が戻せないのだから、治らない→だから、この病気は治らない、となるわけです。

しかし、大学病院で治らないといわれても、決してあきらめる必要はありません。治らないという判断は、狭義の西洋医学的な見方に基づくものにすぎないからです。

例えば、耳管がやせていないのに、耳管開放症の症状の出る患者さんが少なからずいます。やせた女性に多いのは事実ですが、肉づきのいい男性でも症状に悩まされている人がいます。

つまり、耳管がやせていなくとも、耳管開放症は、しばしば起こるということです。「脂肪組織がやせている」という形からだけでは、こうした現象は全く説明できません。

ではいったい、この病気をどのようにとらえたらいいのか、ということになります。

いえることが1つあります。

形にこだわっていてはだめだ。」ということです。

「耳管がやせている」という、目に見える形を元に戻せないので、この病気は治らないと西洋医学では考えられている。形にこだわっていてはだめ
肉づきのいい男性でも、耳管開放症に悩まされている人はいる

耳管開放症と耳管狭窄症は同じ病気の2つの顔

ここで、耳管開放症と耳管狭窄症の違いについて、あらためて考えてみましょう。

耳管開放症で、耳管が開きっぱなしになっている患者さんと、カゼの影響で粘膜が腫れた耳管狭窄症との間には、確かに大きな違いはあります。しかし実は、この2つの疾患は、多くの場合、どちらとも決められないような病態の人が非常に多いのです。

実をいえば、耳管開放症で、耳管がいつも開きっぱなしになっている例は、むしろ少数です。耳管が開きっぱなしになっていないのですから、耳管が閉じているときもあります。にもかかわらず、耳管開放症の症状が起こってくるのです。

カゼなどをひいたあとに起こる、典型的な耳管狭窄症を除くと、「この2つの疾患は、無理にはっきり分けて考えないほうがいい」というのが、私の考えです。

ここで、あらためて問いかけてみましょう。そもそも耳管開放症とは、どういう病気なのでしょうか。

ある患者さんから、以前かかっていた耳鼻科医に、「耳管が開きっぱなしなら、飛行機に乗った際の気圧変化で、耳がつまったりしなくていいですね」といわれたと聞いたことがあります。

その話を耳にしたとき、「自分の経験とはずいぶん違うな……」と、私は即座に思いました。耳管開放症の人が、飛行機の気圧変化が起こったとき、「耳管が開きっぱなしのままだから楽」ということを、残念ながら私は経験していません。

それどころか、耳管開放症の人は、気圧の変化が起こると、むしろ健常人よりもピタリと耳管が閉じてしまいます。耳管が通常の人よりさらに強く狭窄するのです。耳がつまるという症状も激しく出るでしょう。

健康な人は、気圧の変化を感じると、つばを飲み込んだりすることで、耳管を開け閉めして、気圧の調整ができます。しかし、耳管開放症の人はそれがうまくできません。

すなわち、多くの耳管開放症は、耳管の開け閉めの調節ができなくなる病気。耳管の開閉機能の調節障害なのです。

器質的疾患と機能的疾患という、病気の区別法があります。

器質的疾患とは、内臓、器官、神経、筋肉などの組織に、解剖学的・病理学的な変化や変形、異常が起こって生じる疾患です。機能的疾患とは、組織に解剖学的・病理学的な変化や異常が見当たらないのに、その臓器や器官の働きが低下・あるいは亢進し、それが原因となって生じる疾患です。

耳管開放症では、一部の患者さんに、耳管がやせるという、形の変化、すなわち、器質的変化が起こっています。しかし、そもそも、それだけが症状を引き起こすすべての原因ではありません。

むしろ耳管開放症は、耳管を開け閉めする機能が、なんらかの事情によっておかしくなる機能障害であり、機能不全、すなわち、機能的疾患といえるのです。

私が耳管開放症と耳管狭窄症の区別を重要視しないのも、こうした見地に立つからです。極端ないい方をすれば、耳管開放症と耳管狭窄症は、耳管の機能障害という1つの病気の、2つの顔といってもいいでしょう。

そして、耳管の機能回復を目指すという点では、耳管開放症も、耳管狭窄症も、同じ方向で治療を行うことができるのです。

耳管開放症だからといって、いつも耳管が開いているわけではない
耳管開放症も耳管狭窄症(カゼやアレルギー性鼻炎によるものを除く)も、耳管を開け閉めする機能がおかしくなっている病気

耳管開放症に見る、西洋医学の限界

西洋医学は、解剖学や生理学を中心に発達してきた医学で、血液検査や画像診断などの科学的検査によって病気を分析し、その分析に基づいて投薬や手術などの治療を行います。

「エビデンス(科学的根拠)に基づいた治療(EBM=Evidence Based Medicine)」が、その根本です。だからこそ、西洋医学は、検査数値や画像診断など、目に見える証拠を重んじます。

耳管開放症の場合、耳管がやせ細って、開いてしまっていること。それが、この病気における、とりあえずのエビデンス=目に見える証拠となるでしょう。

西洋医学は、基本的に、対症療法のケースが多い医学です。西洋医学の対症療法は、感染症の治療や、外傷や骨折などの救急救命医療に関しては、抜群に効果的です。しかしその一方、慢性疾患に対しては、救急医療のようには有効ではありません。

例えば、糖尿病という典型的な慢性疾患に対して、西洋医学は治療薬やインスリンを投与することで、血糖値やヘモグロビンA1cの数値を下げようとします。まさに、これは対症療法的なアプローチです。

しかし、投薬で血糖値が下がったとしても、それで糖尿病が治ったとはとうていいえません。もし薬を中断したら、血糖値もヘモグロビンA1cも再び上昇するからです。

投薬(対症療法)によって、数値の改善は可能です。そのおかげで、病気の悪化をある程度免れることは可能になるでしょう。しかし、それだけでは病気を根本から治癒させることはできません。

西洋医学は、慢性疾患に対して、このような限界にぶつかってしまうことが多いのです。慢性的な疾患である耳管開放症についても、同じような問題が生じていると考えられます。

耳管開放症の場合、つらい症状なのに、検査数値で異常が見つからないこともあれば、症状が改善しつつあるのに、依然として、聴力検査では悪い数値が出るといったように、各種の検査数値は症状と相関しません。




東洋医学には、「未病」という考え方があります。未病とは、「半健康で、病気に進行しつつある状態」とされています。「日本未病システム学会」の定義によれば、「自覚症状はないが、検査で異常がある状態」および「自覚症状はあるが、検査では異常がない状態」の2つをあわせて「未病」としています。

耳管開放症も、未病に近い性格を持っています。検査では異常が出たり、出なかったりで、発症の背景には、「半健康で、病気に進行しつつある体調不良の状態」があります。

西洋医学は、未病のような体の微細な変化に対して、うまく対応できません。現在、耳管開放症に対して行われている治療、ルゴール塗布、食塩水の点鼻、鼓膜パッチ療法、耳管ピンなどは、皆、対症療法です。

その対症療法が、いずれも根本的な解決法ではないことを見てきました。例えば、ルゴール塗布による治療では、一時的によくなっても、効果が切れれば、症状が復活します。こうした対症療法的な治療をくり返しても、症状は短期間で戻ってしまいます。対症療法では、患者さんは満足を得られず、私が行ってもうまくいきませんでした。

よく行われる指導ですが、耳管のやせている人に、よく食べて太ってもらっても、ほとんど効果は現れません。「耳管がやせている」という目に見える形を変えようとしても、どうにもうまくいかないのです。

私は、耳管開放症の多くの患者さんに接するうちに、先にもふれたとおり、「そもそも形から考えることが間違いなのではないか」と、考えるようになりました。

形から=目に見える証拠から出発する、西洋医学的なアプローチのある種の限界が、ここにあるといってもいいかもしれません。そして、形から機能へ、すなわち、耳管の形ではなく、耳管の機能自体が問題になっているのだと考えるようになりました。

耳管開放症に行われている医療は、すべて対症療法
耳管開放症は「形の異常」よりも「機能の異常」と考える

おすすめの本

なお、本稿は『謎の耳づまり病を自分で治す本』(マキノ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳細は下記のリンクよりご覧ください。

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