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【下肢静脈瘤の最新手術・治療】レーザー、高周波、グルー治療、硬化療法を紹介

【下肢静脈瘤の最新手術・治療】レーザー、高周波、グルー治療、硬化療法を紹介

現在、血管内治療で主流なのは、血管内焼灼術で、レーザー治療と高周波治療の2種類があります。また、グルー治療など熱を使わないで血管をふさぐNTNT治療は、下肢静脈瘤の治療を根本から変える画期的な治療と期待されています。【解説】広川雅之(お茶の水血管外科クリニック院長)

解説者のプロフィール

広川雅之(ひろかわ・まさゆき)
1962年、神奈川県生まれ。87年、高知医科大学卒業。同年、同大第二外科入局。93年、ジョーンズホプキンス大学医学部。2003年、東京医科歯科大学血管外科助手。05年、東京医科歯科大学血管外科講師。同年、お茶の水血管外科クリニック院長。内視鏡的筋膜下穿通枝切離術(99年)、日帰りストリッピング手術(00年)、血管内レーザー治療(02年)など、下肢静脈瘤の新しい治療法の研究・開発を行っている。医学博士、外科専門医、脈管専門医、日本静脈学会理事・ガイドライン委員会委員長、関東甲信越Venous Forum会長、日本血管外科学会評議員、日本脈管学会評議員。主な著書に『下肢静脈瘤は自分で治せる』(マキノ出版)などがある。
▼お茶の水血管外科クリニック

下肢静脈瘤の治療に大きな変化が起こっている

セルフケアを実行してもはかばかしい効果を得られなかったかた、とくに不快な症状は伴わないが浮き出た血管がどうしても気になるかた、下肢静脈瘤が進行してうっ滞性皮膚炎を起こしてしまったかたには、医療機関での治療が必要になります。

ここでは、下肢静脈瘤の治療法に関する最新の情報を解説します。
前著『下肢静脈瘤は自分で治せる』(マキノ出版)を刊行した2015年から5年が経過しました。この間、下肢静脈瘤の治療法には大きな変化が起こっています。

当時、治療の三本柱は、血管内焼灼術硬化療法手術でした。このなかで手術には、ストリッピング手術と高位結紮術の2種類があります。

ストリッピング手術は、逆流防止弁がこわれた静脈の中にワイヤーを入れて、静脈を引き抜く手術法です。一方の高位結紮術は、足のつけ根の静脈を糸でしばり、血液の逆流をせき止める手術法です。

いずれも古くから行われている手術法ですが、患者さんの負担が大きく、ストリッピング手術には合併症の、高位結紮術には再発の可能性が高いことから、最近はほとんど行われなくなっています。

現在、下肢静脈瘤の治療のほとんどは血管内焼灼術となっています。

※厚生労働省「第4回NDBオ―プンデータ」より引用して改変

上の表をご覧ください。これは、厚生労働省が発表した日本における下肢静脈瘤の治療数とその内訳です。2017年4月から2018年3月までの1年間で、約75%が血管内焼灼術となっており、そのうち約72%が外来で行う日帰り手術になっています。

以下に、それぞれの治療法についてくわしく解説していきましょう。

血管内治療

血管内治療とは、文字どおり、血管にカテーテルという細い管を入れて内側から治療する方法です。ストリッピング手術と違って、体を切開して血管を取り出す必要がないため、患者さんの負担が少ないことから、下肢静脈瘤治療の主流となっています。

血管内治療には、血管を焼かないNTNT治療があります。NTNTは英語のnon thermal, non tumescentの略で、熱を使わないで血管をふさぎ、その結果、広範囲の局所麻酔がいらないという意味の次世代の治療です。NTNT治療に関しては後述します。

現在、血管内治療で主流なのは、血管を焼いて治療する血管内焼灼術で、これにはレーザー治療高周波治療の2種類があります。

血管内治療の最大のメリットは、入院の必要がなく、日帰りできることです。しかも、すぐに日常生活に戻ることができます。下肢静脈瘤は、仕事や家事が忙しくて長期間休むことのできない人ほど重症化しやすいので、その意味でもこの治療法の恩恵は大きいといえるでしょう。

治療後に安静にしている必要はなく、事務系の仕事であれば当日から行えます。治療1~2日後にはシャワー、2~3日後には立ち仕事や力仕事、4~5日後には自転車に乗ることができます。1~2週間後には本格的なスポーツも可能になります。

それでは、レーザー治療と高周波治療についてくわしく説明しましょう。

レーザー治療

レーザー治療は、まず、エコー(超音波検査装置)で観察しながら、静脈に細い針を刺します。この針で開けた穴から、レーザー光を照射する光ファイバーという細い管を入れ、足のつけ根まで進めます。

次に、TLA麻酔という特殊な局所麻酔剤を静脈のまわりに注入し、静脈の内側からレーザーを照射します。レーザーの当たった部分がきちんと焼けているのを確認しながら、光ファイバーを足元に向かって引いていくと、静脈は足のつけ根から焼けてふさがっていきます。光ファイバーの先端が皮膚の近くまできたら照射を止め、光ファイバーを引き抜いて治療終了です。

通常は、レーザー治療後に、浮き出た静脈瘤をスタブアバルジョン法という特殊な方法で切除します。スタブアバルジョン法は、特殊な器具を使って1~2ミリの傷から切除をするので、傷跡はほとんど残りません。

レーザー治療もスタブアバルジョン法も、すべて局所麻酔で行うので、術後すぐに起き上がって歩くことができます。術後1ヵ月間は合併症を予防するために弾性ストッキングを着用します。


日本で最初に血管内レーザー治療に使われたレーザーは、波長810nm(ナノメーター)のものでした。その後、波長980、1320、1470、2000nmのレーザーが次々と開発されています。

波長とは、電磁波であるレーザーの波と波の間の距離を示します。波長が長いほど、つまり、nmの数字が大きいほど水に吸収されやすくなります。この水に吸収されやすい性質が、治療後の痛みや皮下出血の少なさのポイントとなります。

ただし、波長が長ければ長いほどよいというわけではなく、適度な水への吸収が必要なため、現在は1470nmのレーザーが最も適しているといわれています。

※下肢静脈瘤患者に対するINT02の比較臨床試験より

また、光ファイバーの性能も患者さんの負担に大きくかかわります。レーザー光は光ファイバーの先端から集中的に照射されるので、高い熱が発生します。そのため、初期のころは焼けこげをつくったり、静脈に穴が開いたりすることがありました。

そこで、光ファイバーの先端にプリズムを装着し、光ファイバーの側面から360度のリング状にレーザー光が照射される「ラディアルファイバー」が開発され、焼けこげや穴が開くことがなくなりました。

その後、このラディアルファイバーを改良した「ラディアル2リングファイバー」、さらに細い「スリムファイバー」が次々と開発され、レーザー治療では治療困難だった症例にも応用範囲が広がっています。


レーザー治療を行った、最近の例を紹介しましょう。
57歳の男性、K・Iさんは、都内でラーメン店を営んでいます。30代前半から左足の太ももからふくらはぎにかけて血管がボコボコと浮き出ているのに気づいていましたが、むくみや痛みなどの自覚症状がなかったため放置していました。30代後半に現在の店を開業し、以来、仕込みを入れると一日12時間以上、立ちっぱなしで仕事を続けていました。

52歳のときに、左足のところどころがかゆくなり、皮膚に茶色い部分が出てきました。手でかいていると、茶色い部分が徐々に広がってきたので、皮膚科に行きましたが、軟膏を処方されただけで、症状はまったく改善しませんでした。

忙しさにかまけて、そのままにしていたところ、56歳のときに皮膚の一部に穴が空き、だんだんと大きくなって痛むので、再び皮膚科に行きました。しかし、今度も軟膏を処方され、毎日消毒するだけで、やはりよくならないため、当院を受診されました。

エコー検査をしたところ、左足の大伏在静脈の全長に弁不全が認められ、静脈の太さも9ミリと非常に太くなっていました。左くるぶしの上には皮膚が破れた潰瘍があり、その周囲は黒く変色して硬くなり、脂肪皮膚硬化症の状態になっており、下肢静脈瘤と長時間の立ち仕事によるうっ滞性潰瘍と診断しました。

うっ滞性潰瘍は下肢静脈瘤を治療すれば治りますが、ここまで悪化したのは、長時間の立ち仕事が原因です。今後も立ち仕事が続くため、治療後のケアをきちんとしなければ、再発をくり返してしまいます。

長時間の立ち仕事をしている人の潰瘍の再発を防ぐには、足の圧迫治療が必須です。そのため、まずは弾性包帯と弾性ストッキングによる圧迫治療を行うことをすすめました。

その1ヵ月後の診察では、潰瘍はすごく小さくなり、痛みも軽くなったため、K・Iさんも圧迫治療に対して前向きな姿勢を見せるようになりました。この時点で、手術の説明をして、1ヵ月後に下肢静脈瘤の治療を行うことにしました。

下肢静脈瘤の治療は、波長1470nmのレーザーによるラディアルファイバーを使った血管内焼灼術で、日帰りの約1時間で終わりました。

術後1ヵ月の診察で、潰瘍は閉鎖していたため、圧迫は日中だけにしました。さらにその1ヵ月の診察では、潰瘍が完全に閉鎖したので、弾性包帯をやめて弾性ストッキングのみにし、潰瘍ができそうになったら、自分の判断で弾性包帯を巻くように指導し、現在に至っています。

高周波治療

もう一つの血管焼灼術である高周波治療は、ラジオ波治療とも呼ばれます。レーザー治療で使用する光ファイバーの代わりに、先端に電熱線を巻いた細いカテーテルを静脈の中に入れて、電熱線に高周波電流を流し、その熱で静脈を焼く治療法です。

2014年には、従来の高周波治療装置を改良した「クロージャーファースト」という装置による治療が、国内で健康保険の適用となっています。クロージャーファーストによる治療は、一度に7センチずつ静脈を焼くことができるので、短時間で治療を終えることが可能になりました。

高周波治療の手法は、レーザー治療とほぼ同じです。
まず、エコーで観察しながら、静脈に細い針を刺し、開けた穴から専用のカテーテルを足のつけ根まで入れて、TLA麻酔をします。

そして、高周波発生装置にカテーテルをつないで、静脈を焼いていきます。起動スイッチを入れると、カテーテルに高周波電流が20秒間流れます。20秒が経過すると、自動的に高周波電流が止まるので、カテーテルを7センチ引き抜いて、同じことをくり返します。

レーザー治療では光ファイバーを少しずつ引きながら静脈を徐々に焼いていくのに対し、高周波では静脈を7センチずつ焼いていくのです。皮膚の近くまできたら、カテーテルを引き抜いて終了です。

血管の中のカテーテルに高周波電流を流しその熱で7センチずつ血管を焼く

治療後は、レーザー治療と同様に、浮き出た静脈瘤をスタブアバルジョン法で切除します。すべて局所麻酔で行う点、術後1ヵ月間は弾性ストッキングを着用する点もレーザー治療と同様です。


このように、レーザー治療と高周波治療は共通点が多く、どちらを選択したらよいのか迷われるかたもいるかもしれません。結論からいうと、患者さんの負担が少なく、傷跡も小さいので、どちらもよい治療法です。治療費もほとんど同じです。受診した医療機関にどちらの装置を置いてあるかにもよりますので、まずは主治医に相談してみてください。

ただし、最初に健康保険の適用となった波長980nmレーザーによる治療は、安全性に問題はないものの、その後に開発され、やはり健康保険の適用となった波長1470nmレーザーによる治療と比べると、痛みや皮下出血が多く起こります。波長1470nmレーザーによる治療と高周波治療ならば、痛みも皮下出血もほとんどありません。

なお、レーザー治療も高周波治療も、ごく低い確率で合併症の起こることがあります。最も深刻なのは深部静脈血栓症です。これは、焼いた静脈ではない、深いところにある静脈に血栓ができる合併症です。

まれに、この血栓が肺に飛んで、肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)を起こすことがあります。この場合、1~2週間入院をして、血栓を溶かす治療が必要になりますが、1000~2000人に1人の割合でしか起こりません。このほかに、皮下出血や傷の化膿、リンパ瘻などの合併症もありますが、いずれもごくまれなものです。

グルー治療が下肢静脈瘤の治療を根本から変える

もう一方の血管内治療であるNTNT治療とは、前述したとおり、熱を使わないで血管をふさぐ治療法で、従来の下肢静脈瘤の治療を根本から変える画期的な治療と期待されています。代表的なNTNT治療の一つがグルー治療で、2019年12月に日本で健康保険の適用となりました。

グルー治療とは、簡単にいうと、瞬間接着材で血管をふさぐ治療法です。英語で接着材を意味するglue(グルー)が治療名の由来です。

グルー治療で使われる瞬間接着材は、シアノアクリレートという有機化合物を主成分としています。シアノアクリレートは、生体内の水分(水酸化物イオン)にふれると、分子がバラバラなモノマーな状態から、分子が重合したポリマーの状態となって、物質を接着します。

シアノアクリレート系瞬間接着材の医療への応用は50年以上の歴史があり、これまで主に血管内治療や皮膚の接着に使用されてきました。そして今回、このシアノアクリレート系瞬間接着材を利用した下肢静脈瘤の治療に、健康保険が適用されることになったのです。血管をふさぐ手段が、血管焼灼術による熱から接着材に変わったと考えればよいでしょう。

グルー治療で使用するディスペンサガン、カテーテル、接着剤

グルー治療は以下の要領で行います。
まず、エコーで観察しながら、専用の細いカテーテルを静脈の中に入れ、足のつけ根まで進めます。瞬間接着材をセットしたカテーテルは、ディスペンサガンというピストル形の注入器に接続してあります。ディスペンサガンの引き金を1回引くと、接着材が0.1ミリリットル押し出される仕組みになっています。

カテーテルの先端が深部静脈から5センチ離れた位置にあることをエコーで確認したら、引き金を2回引いて、1センチ間隔で2ヵ所に接着材を0.1ミリリットルずつ注入して、エコープローブ(エコー機器のなかで患者さんの体に当てる部分)と手で皮膚の上から3分間圧迫します。

その後は、3センチごとに接着材を0.1ミリリットルずつ注入して、30秒間圧迫することをくり返します。カテーテルの挿入部から5センチ手前で最後の注入をして、カテーテルを抜けば終了です。使用する接着材の量は平均1~2ミリリットルとごく少量です。

グルー治療の最大のメリットは、なんといっても低侵襲性、つまり、患者さんの負担が非常に少ない点です。

血管内焼灼術のように、広い範囲に局所麻酔を行わなくてもよいので、麻酔を注射するときの痛みがなく、治療後に麻酔液のしみ出しを吸収するために包帯でグルグル巻きにする必要がありません。

術後に弾性ストッキングを着用する必要もなく、治療後の運動や生活の制限もほとんどありません。治療当日からお酒を飲んだり、ジョギングや体操をしたり、仕事に戻ったりすることもできます

また、合併症の心配がほとんどない点も注目されています。血管内焼灼術の場合、熱による静脈のまわりの組織への影響があり、とくに伏在静脈の近くには神経があるため、皮膚の感覚がにぶくなる神経障害の起こることがありました。

その点、グルー治療は熱を使わないので、静脈周囲への影響がほとんどありません。そのため、血管内焼灼術では治療のむずかしかった、ひざ下の大伏在静脈や、足首近くの小伏在静脈の治療が安全にできます。

加えて、グルー治療は、レーザーや高周波治療のように高額な治療機器が必要ないため、正式なトレーニングを受けた医師さえいれば、レーザーや高周波機器を持っていない医療機関でも治療を行うことができます。

いままでは、血管内治療が行える医療機関は大都市に集中していましたが、グルー治療ならば日本全国津々浦々で治療を受けることができるようになります。

しかも、治療効果も良好です。ベナシールという機器を使ったグルー治療の調査では、3ヵ月後の血管の完全閉塞率は、グルー治療が99.1%(108例中107例)に対し、高周波治療が95.6%(114例中109例)でした。その5年後の追跡調査では、グルー治療が91.4%、高周波治療が85.2%でした。

グルー治療の主な合併症としては、静脈炎があります。グルー治療後1~2週間で、治療した部位の皮膚に赤みや腫れの出る人が5~20%認められ、痛みやかゆみを伴う場合があります。

この静脈炎の主な原因は、体内に異物が入ったことによる異物反応で、一過性のものなので、消炎鎮痛剤を内服すれば、通常1~2週間でおさまります。

ただし、ごく一部の静脈炎は遅延型アレルギーによる過敏症であり、重篤な場合はステロイド薬(副腎皮質ホルモン薬)の内服や、まれに注入したグルーの切除が必要な場合があります。そのため、接着材や接着材の分解産物であるホルムアルデヒドのアレルギーのあるかたやアレルギー体質のかたは、グルー治療の対象外になります

具体的には、まつ毛エクステンション(化学繊維などから作られた人工のまつ毛を使用して自まつげに装着する技術)に使用する接着材でアレルギーを起こしたことがあるかたや、シックハウス症候群(新築の住居などで起こる、倦怠感・めまい・頭痛・湿疹・のどの痛み・呼吸器疾患などの症状が現れる体調不良の総称)、化学物質過敏症のかたになります。

現在行われている下肢静脈瘤治療の90%以上は血管焼灼術であり、レーザー治療と高周波治療の割合はおおよそ半々です。しかし、将来的には、レーザー治療、高周波治療、グルー治療が下肢静脈瘤治療の三本柱となるでしょう。


当院でも、健康保険の適用となった2019年12月からグルー治療を実施しています。最近の例を紹介しましょう。

83歳の主婦、K・Sさんは、事務員として勤務していた50代前半ごろから、右足のふくらはぎに血管が浮き出ているのが気になっていました。

60歳を迎えたときに、むくみやこむら返りが起こるようになったものの、仕事の忙しさから放置。63歳で定年退職すると症状がおさまりましたが、最近になって浮き出た血管のところに湿疹ができ、かゆみを訴えて受診されました。

エコー検査の結果、右足の小伏在静脈に弁不全が認められ、小伏在静脈瘤と、それに伴ううっ滞性皮膚炎と診断しました。

手術の適応症例でしたが、狭心症(心筋の酸素欠乏によって起こる心臓部に激しい痛みを伴う症状)と心筋梗塞(心臓の血管がつまる病気)の既往歴があり、抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)を服用しているためTLA麻酔を使いにくいのと、高齢であること、握力が弱くて弾性ストッキングをはけないことから、グルー治療を選択しました。

手術は、伏臥位(うつぶせに寝た状態)で足首の近くに局所麻酔をして、そこからカテ―テルを挿入し、ディスペンサガンで接着材を注入して、約20分で終了しました。術後には穿刺部(針を刺したところ)にバンソウコウを貼るだけで、弾性ストッキングもはかずにそのまま帰宅されました。食事や運動の制限も一切ありません。

1ヵ月後の診察では、湿疹も改善し、かゆみもなくなっていました。抗血小板薬を服用していると、血液がかたまりにくく、出血の危険性があるので、皮膚を切って静脈瘤を切除することができません。しかし、グルー治療によって血管を接着材でふさげば、静脈瘤は徐々にしぼんでいきます。もし完全に消えなかった場合は、後述する硬化療法で対処することができるので心配ありません。

血管内治療を補助する硬化療法

硬化療法とは、静脈の中に薬剤を注射して静脈をふさぐ治療法です。ふさいだ静脈が硬いしこりのようになるので硬化療法といいます。なお、しこりは半年ほどで自然と吸収されてなくなります。

硬化療法自体はかなり昔から行われていましたが、硬化療法単独では効果が限定的で再発が多く、しだいにあまり行われなくなっていました。しかし、2000年ごろに、従来の硬化療法より効果の高いフォーム硬化療法が開発され、再び硬化療法がよく行われるようになっています。

フォーム硬化療法は、硬化剤を空気とまぜてフォーム状(泡状)にして注入する方法で、薬剤の濃度が低くても治療効果が高く、ある程度進行した下肢静脈瘤でも治療ができます。現在、硬化療法といえば、フォーム硬化療法を指すようになっています。

硬化療法は、軽症静脈瘤や手術後の再発、血管内治療後の補助療法として行われることが多く、とくに、網目状静脈瘤、側枝型静脈瘤、クモの巣状静脈瘤の治療によく使われます。また、麻酔の必要がなく、患者さんの負担が軽いので、お年寄りや、狭心症や心筋梗塞などの病気を合併している人にも適しています。

硬化療法は以下のように行います。まず、立った状態で静脈の3~4ヵ所に注射の針を刺します。次に、ポリドカノールという硬化剤と空気を1:4~5の割合でよくまぜてフォーム状にし、横になった患者さんの静脈の中に注射器から注入します。

注入が終わったら、スポンジやガーゼを丸めたものを静脈に沿って当て、その上から弾性ストッキングをはかせて、静脈を圧迫し、しっかりとふさがるようにします。この圧迫は3~4週間続ける必要があります。

治療5~7日後に静脈が少し痛むようになり、徐々に硬くなって、続いて静脈に沿って茶色の色素沈着が起こります。そして、1ヵ月ほどすると、静脈瘤が治療前よりも盛り上がり、コリコリとしたしこりになり、指で押すと痛みを感じるようになります。しかし、これは硬化療法の正常な経過なので、心配ありません。

その後6ヵ月ほどをかけて、しこりは吸収されて小さくなり、やがて消えます。色素沈着は、通常1~2年で消えますが、うっすらと残る場合もあります。

注射で硬化剤を静脈に注入すると(左)、5〜7日後に静脈瘤がしこりとなるが(右)、半年ほどで吸収されて自然となくなる

硬化療法の合併症としては、血栓性静脈炎があげられます。これは、しこりとなった静脈瘤が真っ赤になって強く痛むもので、静脈内にできた血栓によって炎症が引き起こされて生じます。

痛みは1週間ほどでおさまりますが、炎症の跡が濃い茶色に残ることがあります。そのほかに、脳梗塞(脳の血管がつまる病気)や深部静脈血栓症、皮膚潰瘍などがあげられますが、いずれもごくまれにしか起こりません。

また、治療直後にセキが出たり、目がチカチカしたり、目の前が暗くなったりするのは、空気を含んだ薬剤が肺や脳の血管に流れ込むことによって起こるものです。通常は一時的なもので、足を高く上げて15分ほど安静にしていれば自然におさまります。

なお、気管支ぜんそくのある人、経口避妊薬(ピル)、ホルモン剤、ステロイド薬、一部の骨粗鬆症(骨の中がスカスカになる病気)の薬を服用している人、過去に深部静脈血栓症と診断された人は、硬化療法を受けられない場合があります

いずれにしても、硬化療法は適応となる静脈瘤が限られていること、しこりや色素沈着が消えるのに時間がかかることなどを念頭に置いて、担当の医師によく相談をしてから、治療を受けるかどうかを決めてください。

治療がむずかしいケースとは

今回紹介した治療法は、いずれも患者さんの肉体的な負担が少なく、日帰りで受けられるものです。ただし、以下のような人は治療を受けるのがむずかしい、あるいは、すぐには受けられない場合があります。

深部静脈血栓症になったことがある
ホルモン剤、ステロイド薬を服用している
そのほかの場合

①は、これまでに深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症またはエコノミークラス症候群と診断されたことがある人です。この場合、治療を受けたときに新たな血栓のできる可能性が非常に高いためです。

②の人は、静脈に血栓ができやすいので、服用している間は基本的に治療を受けることができません。現在服用していても、服用をいったん中止して1ヵ月以上経過すれば治療を受けることができます。ただし、服用の中断は必ず医師に相談をしてください。

ホルモン剤は、月経不順、子宮内膜症、子宮筋腫や乳ガンなど、女性の病気に使用されることが多いのですが、男性の前立腺ガンにも使用されることがあるので、注意が必要です。ステロイド薬は内服ではなく、軟膏をぬっているだけなら問題ありません。

③は、妊娠中の人、動脈硬化症で足の血流が悪い人、寝たきりの人、重い感染症のある人などです。妊娠中は弾性ストッキングで症状をコントロールすることができます。

下肢静脈瘤と再発の問題

下肢静脈瘤は、的確な診断をして、根本的な治療を行えば、そう簡単に再発することはありません。少なくとも治療後1~2年で元の状態に戻ることはありません。

ただし、下肢静脈瘤は生活習慣病ですから、いまある下肢静脈瘤を治しても、生活環境や生活習慣に問題があれば、残念ながら新たな静脈瘤ができてしまうことがあります。

しかし、だからといって落ち込む必要はありません。下肢静脈瘤は必ず治る病気です。ガンが再発すると命を落とす危険性が高くなりますが、下肢静脈瘤で死ぬことはありません。再発したら、また治せばよいのです。下肢静脈瘤は何回でも治療することができる病気です。

とはいえ、再発しないにこしたことはありません。そのためには、生活環境や生活習慣を正すことです。

長時間の立ち仕事をしない、こまめに休憩をとる、適度な運動を心がけるなど、自分でできることから無理のない範囲で始めてみてください。体操やマッサージ、弾性ストッキングを、治療後の予防のために続けるのもよいでしょう。

くり返しますが、下肢静脈瘤は必ず治る病気です。一人で悩まずに、不安があるときは医療機関を受診してください。

おすすめの本

なお、本稿は『下肢静脈瘤(血管の名医が教える最高の治し方)』(マキノ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳細は下記のリンクよりご覧ください。

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