解説者のプロフィール

坂田英明(さかた・ひであき)
埼玉医科大学客員教授・川越耳科学クリニック院長。埼玉医科大学卒業後、帝京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科助手を務める。ドイツ・マグデブルグ大学耳鼻咽喉科研究員、埼玉県立小児医療センター耳鼻咽喉科副部長、目白大学保健医療学部言語聴覚学科教授を経て、2016年より川越耳科学クリニック院長。『耳鳴りは1分でよくなる』(マキノ出版)など、著書多数。
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薬だけでめまいは治せない
めまいを改善、予防する上で、もっとも重要なのは、食生活や運動といった生活習慣の改善です。そして、2番目が自己節制、3、4がなくて5が薬です。
どんなによい薬を飲んでいても、生活が乱れ自己節制ができていないと、めまいを治すことはできません。
ライフスタイルを見直し、ふだんの過ごし方を少し工夫するだけで、めまいは起こりにくくなります。
そこで、今日から実践できるめまいの予防対策をご紹介します。
1. ラジオ体操や散歩
適度な運動は全身の血流を促し、めまいの改善、予防に有効です。
お勧めは、ラジオ体操と1日20~30分程度の散歩です。ラジオ体操は全身の筋肉をまんべんなく使うので、習慣にすると足腰が強くなり、よく動ける体になります。
午前中に運動を取り入れると、体調の改善に効果的です。散歩は速歩きを意識して行いましょう。心肺機能が高まり、全身の血流がよくなります。
2. 水分を十分に取る
頭部の血流が悪くなっていると、めまいが起こりやすくなります。水分をしっかり取り、血液の滞りを防ぎましょう。
コップ1杯の水を起床時、入浴前、就寝前に飲んでください。起き抜けに水を飲むと、便秘予防にもなります。

3. ふくらはぎのマッサージ
ふくらはぎをもむと、全身の血液循環がよくなり、脳の血流もスムーズになって、脳出血を予防する効果があります。
寝る1時間ほど前に、5~10分程度、左右のふくらはぎを、足首から心臓に向かってもみましょう。

4. 便通を整える
便秘はめまいの大敵です。便秘薬に頼らず、運動を積極的に行い、また食事内容を工夫して快便を心がけてください。
5. カフェイン飲料、酒、タバコを控える
コーヒーや緑茶、紅茶など、カフェインを多く含む飲み物を取り過ぎると、内耳が興奮しやすくなります。1日に1~2杯にとどめましょう。
過度の飲酒は、脳幹や小脳の働きを低下させます。めまいが治るまでは適量が原則です。喫煙は脳や内耳への酸素の供給量を減らし、めまいを確実に悪化させます。禁煙が不可欠です。
6. テレビの姿勢に注意
ひじ枕でうたた寝をしたり、その姿勢でテレビを見たりする人も多いでしょう。しかし、ひじ枕は頸椎(首の骨)に障害を与え、めまいを誘発する恐れがあります。
テレビを見るときは、イスに座るなど姿勢に注意してください。
7. ぬるめの湯で半身浴
熱い風呂や長風呂は、心臓に負担となります。
めまいの予防には、ぬるめのお湯で、肩まで浸からない半身浴がお勧めです。血流を促し、リラックス効果が得られます。

8. ストレスを避ける
めまいがある人は、ほぼ例外なく、なんらかのストレスを抱えています。
心と体にストレスがたまらないよう、睡眠をしっかり取り、休日はリラックスして過ごし、ガス抜きしましょう。
9. 移動中は座らない
電車やバスでは、座らないでなるべく立ちましょう。手軽にできる平衡訓練になります。

10. 治療薬は用法を守って服用
降圧剤を服用している人は朝、血液抗凝固剤を服用している人は就寝前に、忘れず服用しましょう。
11. 耳に負担をかけない
イヤホンやヘッドホンを長時間使ったり、携帯電話で長電話をしたりすると、内耳に負担がかかり、めまいや耳鳴り、難聴の原因になります。
音楽やゲームを楽しむさいは、耳に負担をかけないよう気をつけましょう。
12. 毛染めに注意
意外かもしれませんが、有機溶剤入りの毛染め液もめまいの原因になります。使用は、慎重になるべきです。
毛染め液に使われているアリニン色素の誘導体という物質は、皮膚からの吸収が高く、一度体内に吸収されると排泄されにくい性質があります。
体内にとどまったアリニン色素の誘導体は、平衡機能をつかさどる小脳に蓄積し、めまいや耳鳴り、難聴を引き起こす恐れがあります。
白髪が気になる人は、ヘナや海藻で作られた染毛剤を試してみるといいでしょう。自然派の染毛剤でも、アレルギーを起こすことがあるので、必ずパッチテストを行います。

すべてを一度に行おうと思わずに、気になる項目から、できる範囲で、実践してください。
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