解説者のプロフィール

入野宏昭(いりの・ひろあき)
IR健康管理システム入野医院院長 。兵庫医科大学卒業。大阪大学第一内科、大阪医療センター等を経て2009年より現職。日本めまい平衡医学会認定めまい相談医。めまいを内科や脳外科などの観点から総合的に診断治療するほか、インターネット上のめまい相談にも定評がある。
▼入野医院
▼専門分野と研究論文
1カ月で76%が改善
私は、首こりを医院で治療するほか、「首の3点押し」など、自宅でできる方法も指導しています。その結果、今までどんな治療を施しても、改善がみられなかった患者さんでも、1ヵ月以内に治療効果を得ています。
首には、いろいろな筋肉があります。その中でも、耳の付け根から首の両脇に沿って走っている胸鎖乳突筋は、神経の中継地点であり、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)や血流に影響が出やすい箇所です。
そこで、首の3点押しは、この筋肉を治療ポイントとしています。胸鎖乳突筋の3点を指でつまむマッサージです(やり方は下記参照)。
胸鎖乳突筋のこりをほぐすことで、自律神経のバランスが整い、血流もよくなります。その結果、滞っていた耳への血流も回復し、めまいの軽減、かつ場合によっては耳鳴りが改善できるというわけです。
めまいのある患者さん136人に、治療と並行して、首の3点押しを含む、いくつかのマッサージを1日3回続けてもらいました。すると、実践から約1ヵ月で、実に76%の人が効果を実感しているという結果でした。
めまいの対策には、首の3点押しのほか、パソコンや編み物、テレビを見るときの姿勢の改善も大切です。また、高齢者の頸性めまいには、体幹や骨格の変形が原因の場合があるので、日常の運動も必要です。
めまいが起こるのを恐れて、首を動かさないよう安静にする人がいますが、むしろストレッチなどで身体を動かして血流をよくするほうが効果的です。
よい状態を長引かせるケアが大事
データ上、めまいは50歳前後の年齢層に頻発するとされます。ただ、私の実感では30~40代の女性に増えているようです。
特に働いている女性は、パソコン業務や育児、家事、さらに介護などにも追われることがあるでしょう。これは、首こりが、疲労やストレスから起こるということと、無関係ではないはずです。
症状が起こるタイミングとしては、眠れなかったり、疲労がピークに達したときと、その反対に、緊張がほどけてほっとしたときに起こりやすい傾向があるようです。
残念ながら、めまいは、完全に治る病気だとは言えません。とは言え、悪くなったり、改善したりをくり返しながら、できるだけいい状態が、長持ちするようにケアしていくことが大事だと思います。
そうしたことからも、ぜひ、この簡単な首の3点押しを、日常生活に取り入れていただきたいと思っています。
ただし、全身の動脈硬化があったり、重い高血圧や糖尿病がある人は行わないようにしてください。
「首の3点押し」のやり方
※朝昼晩、1日3回行う。
※入浴後に行うのがお勧め。

❶肩を動かさずに、顔を水平に動かし、できるだけ右を向く。浮き出た胸鎖乳突筋の、上のほう(耳の下)を指でつまんで、もみほぐす。

❷胸鎖乳突筋の真ん中に指をずらし、同様につまんで、もみほぐす。

❸胸鎖乳突筋の下のほう(鎖骨の近く)に指をずらし、同様につまんで、もみほぐす。
❹胸鎖乳突筋の下、真ん中、上の順に同様につまんでもみほぐす。リズムよく上から下、下から上を1往復として、3往復行う。
❺左側も同様に行う。
おすすめの本
めまいは首をもめば治る (改善率は9割!専門医が勧める「首の3点もみ」)