解説者のプロフィール

市橋研一(いちはし・けんいち)
市橋クリニック院長。日本整形外科学会専門医。医学博士。関西医科大学卒業後、神戸大学整形外科学教室に入局。その後、公文病院整形外科、適寿リハビリテーション病院診療部部長、市橋クリニック副院長を経て、2000年より現職。食事療法を軸とした独自の治療法で、整形外科疾患や生活習慣病の改善など、数多くの成果を上げている。また、自身が開発した「ひざ軟骨再生療法」は、治癒率が高く、変形性ひざ関節症やスポーツ外傷などに悩む人たちが通い続けている。
▼市橋クリニック(神戸市東灘区)http://daichikai.or.jp/ichihashi/
砂糖・小麦・カフェインの摂取を控えよう
食生活で注意したい点には、日本人の体質に合わない食品である砂糖・小麦・カフェインをとり過ぎないことが挙げられます。
血管をゴースト化させる要因が交感神経の持続的緊張であること、そして、砂糖・小麦が血糖値を急上昇させることで、その緊張を促すことは、前記事でお話ししました。特に、精製された白い砂糖や小麦粉は、血糖値をグンと跳ね上げ、血管も傷つけてしまいます。
砂糖や小麦を含む食品は主に、パンやクッキー、ケーキ、スナック菓子、麺類などです。特に菓子パンは、小麦だけでなく砂糖も多いので要注意です。また、麺類は、パスタやうどんのほか、ソバも、つなぎに小麦粉を使っている物は避けましょう。饅頭や肉まんの皮も小麦粉でできているので、控えたほうが無難です。
私の患者さんには、菓子パンとコーヒーをやめて、こむら返りが軽減した人もいました。
ちなみに、白米も糖質の多い食品ですが、過食しない限り、私は摂取に問題はないと考えています。砂糖や小麦のように粉状ではなく粒状なので、炭水化物の吸収速度が落ちるうえ、日本人の体質に合っています。

とり過ぎると交感神経の優位を促してしまう。
カフェインを多く含む食品といえば、コーヒーです。
水溶性でもあり脂溶性でもあるカフェインは、血液脳関門(血液と脳の組織液との間の物質交換を制限する機構)を突破して脳に侵入しやすく、コーヒーを多量に摂取し続けた人は、ほとんど摂取しない人と比べて、脳の松果体(メラトニンなどのホルモンを分泌する器官)が縮小していたという研究報告もあります。
脳に影響を及ぼすということは、ホルモン分泌や睡眠にも悪影響が及ぶ可能性が高いということです。
また、緑茶や紅茶などにもカフェインが含まれているため、飲み過ぎには注意が必要です。
砂糖・小麦・カフェインの3つは血管を不健康にして、糖尿病をはじめとするさまざまな生活習慣病や、血管系の病気を引き起こす可能性があります。ふだんから極力とらないよう意識しましょう。
和食を基本食にして腸内環境を整える
腸内環境を整えることも、こむら返りを防ぐのに有効です。
私にオクラ水を教えてくれた食養生の先生は、「夜のこむら返りはホルモンの分泌異常が原因」とおっしゃっていました。たとえば、夜ぐっすり眠るためにつくられる脳内物質「セロトニン」は、「幸せホルモン」と呼ばれています。このホルモンは、9割が腸でつくられることがわかっています。
腸内環境が悪いと、こうしたホルモンがきちんとつくられず、夜の睡眠やこむら返りなどの不調につながる可能性は十分考えられます。また、腸内環境が悪いと、老廃物が蓄積して血液やリンパ液の流れを悪くすることも、こむら返りにつながる一因です。
そこで、こむら返りを防ぐ食生活として提案するのが、腸内環境をよくする食事です。1つは、前記事で紹介したオクラ水を飲んだり浸けたオクラを食べたりすること。
もう1つは、和定食を積極的にとることです。

日本人の腸に適した理想の食事。
具体的な食事内容としては、主食は雑穀もしくは白米、おかずは魚と肉をとる頻度が4対1くらいの割合で、揚げ物、炒め物は控えめに。食物繊維が豊富な野菜、果物、海藻、キノコを積極的にとりましょう。
また、酵母や麹を使った日本独自の発酵食品は、腸内環境を整えるのに非常にいい食べ物です。味つけにはしょうゆ、みそなどの発酵系調味料を活用し、ぬかや麹で漬けた漬け物などを食事に取り入れるとよいでしょう。
よい腸内細菌を育てるには、さまざまな食材をとったほうがいいので、1食あたり、主菜と副菜を合わせて3品以上食べるのが理想です。
マグネシウム、銅を多く含む食品をとる
ミネラルバランスの乱れも、腱紡錘の機能低下の原因です。特に、筋肉の収縮に関与しているマグネシウムが不足すると、こむら返りが起こりやすくなるといわれています。
食生活で、マグネシウムと銅を多く含む食品を積極的にとることを心がけましょう。
ただし、サプリメント等でとると、過剰摂取になる危険性があります。必要な栄養は、食品でとることを基本にしてください。マグネシウムを多く含む食べ物として、私がお勧めするのは以下の食品です。

⃝魚介類(特にシラス干し、アサリ、キンメダイ等に豊富)
⃝海藻類(特にノリ、ヒジキ、モズク、アオサ等に豊富)
⃝青菜(特にホウレンソウ、ケール、バジル、パセリ等に豊富)
⃝発酵食品(特に米みそ、たくあん漬け、ぬか漬け等に豊富)
「昼間のこむら返りは、銅不足が原因」とする説もあります。日中によくこむら返りを起こす人は、銅を多く含む食品をとりましょう。こちらもマグネシウムと同じく、過剰摂取を避けるため、サプリメントではなく食品からとるようにしてください。
銅を多く含む食べ物として、私がお勧めするのは以下の食品です。

⃝ 魚介類(特にイカ、タコ、シジミ等に豊富)
⃝ 発酵食品(特に豆みそ、米みそ等に豊富)
⃝ ココア
なお、私はふだんの診療では、患者さん一人ひとりの体質に合わせた「八体質医学」による食事指導を行っています。八体質医学とは、100年の歴史を持つ韓国の伝統医学です。私は、8つのタイプに分類された体質によって、患者さん一人ひとりに食べてよい物、避けるべき物を指導しています。
ここでは、各人の体質を診ることはできないため、比較的多くの人が食べても問題のない食品を挙げました。なお、魚介類の中でも青魚や甲殻類、海藻類の中でもワカメやコンブ、発酵食品の中でも納豆は、体質によって合わない人がいるため、あまりお勧めしていません。
おすすめの本
なお、本稿は『こむら返りは食事で治せる!』(マキノ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳細は下記のリンクよりご覧ください。